どうか夢であったなら
2016/03/11の話
昨日、初めて君の街に行った。
電車に乗って、バスに乗って、そこからはずっと歩いて。
街はところどころ工事中で、通行止めも多くて
行ったり来たり、戻ったり、迂回しながら君の街を目指した
青く広がる空、遠くまで伸びる水平線、涼しい風。
とてもさわやかな空気だった
途中、キラキラと水面輝くとても綺麗な川があった
思わず写真を撮ったけど、橋から遠くて近づけなかった
慰霊碑周りは多くの人でごった返していた
もう5年になるから、初めて来た人は少なかったのかもしれない
参り方に、慣れているようにも見えた
献花して、祈りを捧げて
それからしばらくは、君の名前を見つめていた
一度だけ、君の名前に触れて
ゆっくりと上下になぞった 冷たくはなかった さらさらとしていた
そのあと、川べりに歩いて
昔もらった年賀状を頼りに、君の家へ行った でも行けなかった
すでに一帯は工事中で、立入禁止のようだった
ロープの手前から、うんと背伸びをして覗いてみると
君の家の跡は コンクリートですっかり塗り固められていた
そちらを向いて、君のことを思ってしばらく、祈り続けた
用も済んだので、橋を渡って反対側にまた歩き出した
帰りにもう一度、あの川の前を通った
「あ、あのきらきらした場所だ」と思って、ふと顔を上げた
そのきらきらした場所の上が、ちょうど君の家の跡だった
いい年して何を言ってるんだろうって今でも思うけど
あのきらきらとした輝きは 君だったんだなと思う
ようやく君に会えた気がして
橋の上でずっと川を見ていた 目の奥がずっとずっと 熱かった